親として気になる子どものいじめ問題。
「もし、子どもがいじめに遭ったら・・・」
「子どもがいじめられたら親としてどうすべき?」
「うちの子がいじめる側にならないか不安・・・」
ニュースで頻繁に流れる子どものいじめ問題を見るたびに他人事とは思えず、とても不安になりますよね。
ここでは、子どものいじめの実態と原因に迫り、親がとるべき行動についてまとめました。
現代のいじめは昔とは質が違い、より複雑化しています。
まずはいじめの現状と実態を知り、教育現場では何が起きているのか、家庭でできる事は何か?を考えていきましょう。
【小学生・中学生別】最近のいじめの現状と実態
保護者として、今日本で起きている子どものいじめの現状を知ることはとても大切です。
ここでは小・中学校のいじめについて、文部科学省のデータを元に現状と実態をお伝えしていきます。
(1) いじめの認知件数
引用:文部科学省
こちらのグラフは文部科学省の調査による、「いじめの認知学校数の推移」です。
平成29年度のいじめの認知件数は、小・中・高校合わせて414,378 件。
前年度323,143 件よりも、なんと1万件近く上回っています。
このデータはあくまでいじめを認知した学校の件数であり、いじめ被害を認めていない中で事件に発展するケースが多いのも現状です。
気になるのが小学校のいじめ件数が急増しているところですね。
小学校
引用:文部科学省
先ほどのデータによれば、小学校におけるいじめ認知件数は「平成29年度317,121 件(前年度237,256 件)」です。
また、学年別・男女別データを見ると小学校3年生のいじめが最も多く、高学年になるにつれ減少していくこともわかります。
平成25年度から急激に増加していることが明らかですが、小・中・高の中で小学校でのいじめ件数が最も多いことも大きな気がかりです。
中学校
引用:文部科学省
中学校での平成29年度のいじめ認知件数は、「80,424 件(前年度71,309 件)」です。
また、中学校1年生男子のいじめ件数が最も多くて「24,145件」と、女子より約7千件も多いことについても注目されています。
中学生の自殺者数は過去6年増加したままで減少することがなく、いじめを含む原因による平成29年度中学生の自殺者数は84人(前年度69人)でした。
(2) 不登校数
いじめが原因で、学校を欠席する小中学生の不登校数も年々増加しています。
増加する背景には、フリースクールなど学校以外の学びの場を選ぶ児童が増えたことも関わっていたりと、不登校に対する対応が変化している傾向です。
病気や経済的理由以外で30日以上休む児童の欠席理由は、学校の人間関係や家庭的な理由があがっています。
では、小学校と中学校の不登校者数はどのくらいあるのでしょうか?
小学校
いじめを含む、平成29年度の小学生の不登校者数は「72,518 人(前年度67,093 人)」です。
そのうち15,975 人が90日以上、956人が1日も出席をしていないという結果となっています。
中学校
中学生の不登校者数は「144,522人 (前年度139,200 人)」と、前年度よりも約5千人増加し、14万人を超える生徒が病気以外の理由で欠席をしています。
いじめの認知件数は低いものの、小学生の約2倍となる人数が不登校を続けているのが現状です。
(3) 被害内容
引用:文部科学省
では、いじめの内容は一体どんなものがあるのでしょうか。
文部科学省の調査による「暴力行為発生件数の推移」を見ると、平成29年度は63,325件と過去最高を記録。
ここでも小学校の件数が大幅に増加していることが目立ちます。
暴力によるいじめが低年齢化していることを念頭に置いた上で、小中学校で起きているいじめの具体的な内容を、被害の多い順からご覧ください。
- 悪口や冷やかし
- 仲間はずれや無視
- 押す、叩くなどの軽い暴力
- 嫌なことをさせられる
- ひどい暴力
- 持ち物への被害
- お金をたかられる
小中学校で最も多いいじめが「悪口や冷やかし」といった、精神的に追い詰めるものです。
軽い気持ちでからかう行為から、大きないじめへと発展するきっかけとなっていることがわかります。
そこから仲間はずれがはじまり、やがては暴力行為や金品をたかるといった、本格的ないじめへと発展していることも見てとれる順番です。
中学生になるとネットを使った誹謗中傷が中心となってしまい、親や教師の見えない部分でいじめが今大きな問題となっています。
さらに近年では、小学生でも重い金銭を要求する事件も発生しているので「小学生だから」と無視できないの現状です。
(4) いじめ発見のきっかけ
いじめを認知した学校は、どんなきっかけによって問題に直面したのかは保護者にとって最も知り得たいポイントではないでしょうか。
家庭だけでは発見することは難しく、いじめが起こる学校側で早期発見することが望ましいと考えますよね。
では、教育現場ではいじめに対してどんな取り組みをしているのでしょうか。
小学生
文部科学省による平成29年度「いじめ発見のきっかけの推移」によれば、「学校の教育員等が発見…70%(前年度69.0%)」が最も多く、全体の7割が教師や学校関係者が発見しています。
残りの3割は「本人からの訴え」ということではなく、このようなきっかけで発見されていました。
- 本人の訴え…16.1%
- 生徒の保護者からの訴え…9.4%
- 本人以外の児童生徒からの訴え…2.4%
- 地域住民からの情報…0.1%
- 学校以外の相談機関などからの情報…0.1%
- 匿名による情報…0.1%
いじめに遭った本人からの訴えは前年度(16.1%)よりも増加していますが、「いじめに遭っている」と相談することが難しい現状のようです。
学校側は「アンケート調査」で発見することが最も多く、偶然いじめを発見しない限り把握できないこともこの結果でわかります。
中学生
中学生になると学校側が発見することがより難航してきます。
「学校の教育員等が発見…54.6%(前年度56.1%)」と小学校よりも15%ほど減少してしまっています。
しかし、「本人からの訴え…24.3%(前年度22.8%)」とこちらは小学生よりも増えているので、自分の身を守るための行動を取っているようですね。
たた本人が「いじめられている」と認めるまで個人差があり、第三者が発見しない限り気づかれない可能性もあります。
いじめの背景にある3つの原因
「いじめが起きる根本的な原因とは?」
「なぜこんなにいじめが増えてしまっているのでしょうか?」
何もなければいじめは起きません。
ここでは、いじめの背景にある3つの原因についてお伝えしていきます。
子どもを持つ保護者の方は、昔と今起きているいじめの違いについても考えてみてください。
原因1.学校
学校でいじめが起きやすいのは、親や教師といった大人の目が届かない瞬間が多いからです。
また、教育重視の学校であれば、子どもは劣等感や不満を抱えやすくなるでしょう。
子どもの性格もバラバラなので、当然ながら意見が合わないことが日常的に起こります。
その時に「ムカつく」という苛立ちを覚えてしまい、「攻撃したい」という気持ちを抑えきれないことがいじめの種となってしまうのです。
教師のいじめに対する指導力も度々問題にあがりますが、教師自体もハードな働き方を強いられているので正しい対応ができないのは確かです。
教育現場全体の見直し求められているのが現状で、それに子どもが巻き込まれてしまうケースも起きています。
原因2.社会
現代に生まれた子どもは、塾や習い事に忙しい子どもが多く、家ではネットやゲームに時間を費やしていることが多いです。
便利な情報社会になった分、脳が休まる瞬間が限りなく減ってしまい、気づかぬうちにストレスを抱えてしまっていることに。
また、受験や校則に縛られてしまうことが多いこともストレスを抱える要因となっており、欲求不満が大きくふくらんでしまう可能性も否めません。
最近のいじめでは「面倒なことに関わりたくない」と考える「傍観者」がたくさんいるのが大きな特徴ですが、これは私事化社会が生み出した自己防衛が影響しているものです。
現代の子どもは「自分を守ろう」という意識が強いため、みんなと一緒じゃないと不安でいっぱいになってしまうのが特徴的。
そのため、抜きん出ることに強い恐怖を感じたり、欲求を持たない子どもが増えています。
原因3.家庭
子どもがいじめる・いじめられる原因は、家庭環境こそが大きな影響を与えます。
「あの子の成績はいいのに」とほかの子どもと比較されていれば、比べられた子を恨むようになるでしょう。
教育方針を第一にして育てた子どもは、本当にしたいことが言えずにストレスを抱えてしまいます。
親子間に信頼関係が築かれていないと、「いじめられている」と打ち明けることがでできず、自分で解決しようとがまんをしてしまうはず。
我慢強いことは悪い事ではありません。
そういった子こそ、小さな変化に気づいてあげられるような心のゆとりを持ち、家庭環境を作ることが大切です。
いじめる・いじめられる子どもの特徴
次に、いじめる子ども・いじめられやすい子どものよくある特徴です。
必ずしもこの特徴が当てはまることはなく、いじめごとに質が異なることを頭に置いた上で参考にしてくださいね。
(1) いじめる子ども
まずは「いじめる子ども」の特徴についてご紹介していきます。
よくあるいじめに見られる子どものタイプとして受け止めてください。
特徴1.ストレスを抱えている
いじめの根本となる「イライラ」は、ストレスを抱えている子どもが持ちやすいです。
友達に対して羨ましい、ムカつくといった感情を抱きやすい子どもは、つい悪口を言ってしまったり手を出してしまうことがあります。
人と比べられる環境だったり、日ごろの不満を抱えていて、イライラをコントロールできなくなっているのが特徴です。
特徴2.人いじりする癖がある
いわゆる「ちょっかいを出す」子どもです。
いじめているつもりはなくても、つい「くさい」「顔が変」といった人いじりをする癖があると、相手の子どもは「いじめられた」と受け取ってしまいます。
遊びの感覚ではじめたのがいつしか周りの友達もいじめに加担してしまい、どんどんエスカレートするいじめのパターンにつながりやすいです。
特徴3.他人を意識している
とても負けず嫌いで、いつも他人を意識している子どももいじめに走ることがあります。
認められたいといった承認欲求が強く、自分より優れている友達がいると強い怒りを覚えてしまうことも。
点数や結果で親の機嫌が左右してしまうといった、教育第一主義の家庭環境で育っている子どもに多く見られます。
(2) いじめられる子ども
逆に、いじめられる子どもにも少なからず特徴があります。
ただし、この特徴を持っているからいじめられるという意味ではないことをご理解ください。
特徴1.目立ちやすい
良い意味でも悪い意味でも、目立つ子どもは注目されやすいです。
人と違うことを嫌う現代の子どもにとって、目立つ人のことを個性と受け止めず「目立つ=変」とまくし上げてしまう傾向があります。
いつもグループ行動を取ったりするのも、自分だけ違うことへの恐れだったり、いじめられる恐怖心を心の中で持っている子どもも多いです。
特徴2.大人しい
昔と変わらないのが、大人しくて口応えしない子どもがいじめの標的になりやすいということです。
いわゆる弱いものいじめは子どもだけではなく大人社会でも起こりますが、自分よりも劣っている人間の存在によって自尊心が生まれます。
弱いものいじめをする目的こそまさにストレス発散でしかなく、心にゆとりがない証拠です。
特徴3.人付き合いが苦手
学校には色々なタイプの子どもがいて、人付き合いが苦手な子も多いです。
友達に話しかけることに躊躇しているうちに孤立化してしまい、グループから目を付けられてしまうことからいじめへと発展することが度々あります。
どちらかと言えば、女の子の方がグループ行動を強く意識するので集団でいじめるこことが多くなります。
子どもがいじめ被害に遭ったら?親が取るべき行動
「もしわが子がいじめられていたら・・・」
「どうやって声をかけてあげたらいいのかわからない・・・」
もしも子どもがいじめ被害に遭ったら?と考えてみると、冷静に対応できるか不安になりますよね。
これからのためにも、子どもがいじめ被害に遭ったときに親が取るべき行動をご紹介していきます。
行動1.子どもを守る
まずはいじめ加害者から子どもの身の安全を確保するために、相手の子供や学校から守ることが最優先です。
そして、子どもの味方であることを伝えてください。
いじめを告白されたり、いじめの現場に遭遇してしまうと冷静さを見失ってしまうかもしれませんが、感情のまま突っ走らないように気持ちを落ち着かせることが重要です。
深呼吸をして、子どもの心を休ませることを第一に考え、学校を欠席させることも視野に入れてください。
行動2.学校や警察に相談する
いじめが発覚したらすぐに学校へ相談しましょう。
加害者へ連絡するよりも、学校の様子を知っている担任に話を聞いた方が第三者の立場の意見を聞くことができます。
状況によっては警察に相談することもできます。
学校へ相談しても改善せずに悪質ないじめが何度も起きてしまう、こんなケースであればわが子の命を最優先に考えて警察に動いてもらうことも検討してください。
行動3.子どもが安心できる環境を作る
精神的に苦しんでいる子どもには、安心できる居場所を作ってあげることが重要です。
中には、子どもがいじめに遭ったことを受け入れられず、子どもに当たってしまう親もいます。
それでは、学校にも家庭にも自分の居場所を見失ってしまい、結果的に子どもに大きな苦しみを与えてしまうことになってしまうことにもなりかねません。
不登校になってしまったとしても、家庭で勉強をしたりフリースクールといった逃げ場があることを教えてあげてください。
親ができるいじめへの3つ予防
親としての願いは、子どもがいじめに関わらないで学校生活を送ることですよね。
そのために知っておきたい、親ができるいじめへの3つの予防をお伝えしていきます。
いじめ被害者にならないためだけではなく、わが子がいじめ加害者になってしまう可能性も考えてみてください。
予防1.小さなサインに気づく
実際にいじめに遭った子どもは、「親に相談するのは恥ずかしい」と考えてしまい、ひとりで我慢をし続けてしまうことが大半です。
わが子の小さな変化にこそいじめのサインが隠れているので、こんな行動が見られる時には「どうしたの?」と声をかけてみてください。
- 浮かばない表情をしている
- アザやすり傷が増えた
- 成績が急に落ちた
- ゲームやネットに没頭して現実逃避をしている
- 朝、体調不良を訴える
- 持ち物や洋服の損傷が激しくなった
- やったはずの宿題が「未提出」という連絡が来る
- 作り笑いを浮かべる
このような異変からいじめ発覚につながることがあります。
「うちの子に限って」という概念を捨てて、まずは子どもの話を聞くようにしてください。
学校と子どもの意見に違いがあった時にも「おかしい」という気持ちを持ち、子どもを責めないで聞いてあげることが肝心です。
予防2.味方であることを伝える
日ごろから「何があっても味方だよ」と伝え続けることが非常に大切です。
「もしもの時は守ってもらえる」という気持ちを持っている子どもは自分に自信を持つことができ、何かあれば親に打ち明けることができます。
一方的に「こうしなさい」と頭ごなしに言うのではなく、子どもの言うことを肯定した上でアドバイスを送ることも忘れないでください。
予防3.いじめについて一緒に考える
親子でいじめについて一緒に考えることで、「こんな時はどうしたらいいのか」が分かるようになります。
いじめによるニュースを見たら、「自分だったらどうする?」と考えさせてみてください。
いじめる側の気持ち、いじめられた人の気持ち、それを見て見ぬふりをする人の気持ちを想定することで、いざという時にどうすべきか行動に移しやすくなります。
言い返すことが苦手な子どもであれば、「やだ!」「やめて!」と拒絶できるように心身を鍛えることも大切です。
まとめ
子どもを持つ親としていじめはとても不安な問題であり、いざという時に冷静な判断ができなくなりますよね。
「今日はどうだった?」と子どもの話を聞くことを続けてこそ、小さな異変に気づけるようになるでしょう。
子どもの命を守るためにも、ぜひこの機会に親子関係を見直してください。